植物組織像
植物の組織を観察するには、通常ツバキの葉や草本植物の茎が用いられます。それらは比較的硬い組織なので、徒手切片法で簡単に切片が作製できます。ところが、柔らかい草本植物の葉や、さらに柔らかい花弁や幼葉を徒手切片で切ることはほとんどできません。加えて、これらの柔らかい植物の組織には細胞間隙に空気を多く含み、顕微鏡で観察したり、計測するとき気泡が黒くなり大変見づらくなります。そこで、植物の顕微鏡標本の作成法に関して、(1)植物の軟らかい組織から空気を抜き、(2)適切な支持体で挟む方法を考案しました。この結果、花や幼い葉、細い根、雄しべ、雌しべなど、色々な植物の種類、部位を見ることができます。
柔らかい植物の徒手切片作成法
(1) 細胞間隙からの空気の脱気
いくつかの方法で脱気をすることができます。真空ポンプで脱気することができます。どんな真空ポンプでもかまいません。高校では物理の実験室にあると思います。また、食品や衣服を入れたビニール袋から空気を抜く簡易型のポンプでもかまいません。生きた細胞を使用しなければ、煮沸して脱気した組織でも充分です。
実際に脱気するときには、ガラス瓶に1/3程度の水を入れ、試料を数ミリ角に切断したものを入れます。蓋を密着します(空気がもれないようにパラフィルムでシールしましたが、なければ必要ないかもしれません)。真空ポンプに連結した注射針をガラス瓶に挿し、脱気します。脱気されると組織片から気泡がどんどん出てきます。5分ほど脱気したあと蓋を外すと、ポンと音がしてそれまで浮いていた試料に水が入り、水の底に沈みます。色も透明感がでてきます。
(2) 適切な支持体と徒手切片
植物の葉を薄切するとき、ツバキの葉は直接試料を薄切します。あるいは、数枚まとめて薄切する場合もあるでしょう。あるいは、従来から用いられている市販のニワトコのピスに挟んで薄切する場合もあるかもしれません。しかし、ニワトコのピスは乾燥しているために、硬めの試料でないとうまく切れません。
そこで、柔らかい葉や花弁、雄蕊、雌蕊の場合、もっと滑らかで軟らかく、張りがある支持体でないとうまく薄切できません。そこで、ブロッコリーの髄を使用しました。中心の白色をした髄から1cm弱の四角い棒状の支持体を切り出します。そこにカミソリで切れ込みを入れ、試料を挟み込んで髄と一緒に薄切します。カミソリの刃は切れ味の良い、フェザーのステンレス製の両刃カミソリを刃を半分に折り使用します。手を切らないように充分に注意して下さい。薄切した試料は通常の方法通り、シャーレに入れプレパラートを作成します。