研究内容

エネルギー分解CT

X線コンピュータ断層撮影(CT)法は短時間で人体内部の情報が得られるため,交通事故や梗塞といった緊急時に非常に有用です.また,切開しないため肉体的苦痛が少ない診断方法です. 一般的な病院のCTは,図1の様々なエネルギーのX線を用いるため,物体の形状の識別は可能ですが,組成(何で出来ている)かを識別することは困難な場合もあります.物体を透過してきたX線のもつエネルギー情報を利用したCT(エネルギー分解CT)を用いると,物体固有の特徴であるK吸収端等を利用すことで詳細な組成識別が可能です.

研究

図1 管電圧120 kVの場合のX線スペクトル(Birchの式).

我々は,神野郁夫先生が考案されたtransXend検出器を用いたエネルギー分解CTの研究を行っています.transXend検出器も従来のCT同様にX線をエネルギーの区別無く電流値として読み出します.しかし,図2に示す様にX線の透過方向に複数の検出器素子を並べた構造をしています.これにより,低エネルギーのX線は前方の素子で吸収されますが,高エネルギーのX線は前方でも吸収されますが後方の素子まで到達するものもあります.これにより,透過する物質により各素子から読み出す電流値の応答に変数が生じ,計算によりエネルギー情報を取得できます.

研究

図2 transXend検出器(J. Nucl. Sci. and Technol., 45, 1165-1170 (2008)).