よくわかる解説

青い光のほうが赤い光より屈折率が大きいのはどうしてでしょう?

参考図書 ファインマン物理学U 光・熱・波動 第6章 屈折率の本質

 

解説1:光は電磁波

1)光は電磁波の一種です。電磁波というのは電場や磁場が時間とともに変化する様子が伝わっていく波のことです。

ある点Aに電気量(電荷)をおくとそのまわりに電場ができます。Aにおいた電気量が時間的に変化すると少し離れた点Bにできる電場も変動します。

注:電場や磁場とは電気量や電流が周りに作る影響のこと。中学校や高校の学習では電界、磁界といいます。この影響があるので電気的な力や磁気的な力が働きます。

 

2)Aで電気量が振動して電場の変化がBに伝わるときその電場はAB間の距離(とする)と電磁波(光)が伝わる時間だけ遅れることになります。 今AB間は真空とします。真空中を伝わる光の速さをとするとBでの電場は時間にしてT=だけ遅れます。

   Aでの電場の振動 の様子は 一般に三角関数を使って書くことができます。 

        EA=E0sinωt (ωは角速度)  

 BではTだけ遅れるということは時間がt → t−Tしか進んでいないことになるので

   Bでの電場は E0sinω(t−T)と書けます

光がある速さで伝わるというのはそれぞれの場所の電場の様子に時間の遅れができるということなのです。

 

解説2:光が物質を通るということはAB間に物質をおいたことになる

新しい物質がAB間にはいるとBにできる電場は 、あいだに何もないときと異なる

3)AとBの間に物質をおいたとき、Bの電場には、なにも無かったときにできた電場EAに、あいだにおいた物質Cの中の電子がBに作る電場Ecが追加されます。

  つまり 

      Bにできる電場=Aからの電場 EA+物質 Cからの電場EC ・・・ @

  となります。

 

あいだに物質がはいると光の伝わる速さが変わり遅れが生じる

4)AとBの間に物質をおくと物質内を光が伝わる時間だけ、何もおかないときよりさらにΔT遅れます。

その時間の遅れは物質内を伝わる光の速さに依存します。

  AからBまで進む時間がT+ΔTになるとすると Bでの電場は E0sinω(t−T−ΔT)と書けます

ここでちょっと数学に頼ります。三角関数の公式を使うと(ΔTは小さいとします)

    sinω(t−T−ΔT)=sinω(t−T)cosωΔT+cosω(t−T)sinωΔT

            〜sinω(t−T)+ωΔTsinω(t−T+π/2) ・・・・A

     注:ΔTが小さいとき cosΔT〜1 sinΔT〜ΔT という近似が成り立つ

  @とAを比較すると  第1項がもともとのAからの電場EAで第2項が物質によってできる電場ECになります。

つまり物質中を進む光が真空中より遅くなり、Bへの到達時間が遅れますが、その遅れΔTは物質C中の電子による電場ECの振幅に比例します

 

解説3:物質C内の電子はAからの電場の振動によって揺さぶられる

5)物質内の電子は通常ある決まった固有振動(角速度ω0)をしています。そこにAからの電場(角速度ω 伝わる光の波長に反比例)による影響で

強制力が働きます。 こういう現象を強制振動といいます。このとき強制振動の振幅は2つの角速度を使って

    1/(ω02−ω2

に比例します。ω0は物質中の電子の振動なので物質の種類に依存しますがωは伝わる光の波長で決まります。一般に伝わる光が可視光の場合、

ω02>ω2になります。 するとω02−ω2はωが大きいほどω02より小さくなるので 逆に1/(ω02−ω2)は大きくなります。 つまり振幅が大きくなるので時間の遅れΔT

大きくなり物質の中で光が遅いことになります。

つまり光の波長が 短いとωはより大きいので振幅も大きくなり時間の遅れも大きいことになり、逆に光の波長が長いと

ωはより小さいので振幅が小さく時間の遅れも小さくなります

だから波長の短い青い光のほうが物質内での速さは 遅く、赤い光のほうが速いのです

 

解説4:物質を通過する光の速さと屈折率の関係は?

例えば光がガラスなどの物質に入ろうとするとき図のように進みます。

 2つの平行な光@とAはABまで揃ってやってきます。

 @の光は速さVでCまで進みます。同じ時間にAは物質内なので遅くなった速さVでDまで進みます。

 それ以降はまた揃って進みます。これが屈折です。

ここで入射角をα、屈折角をβとすると

   AC=BCsinα  BD=BCsinβ

になります。今AC、BDは同じ時間に進む距離なのでACは速さVに比例し、BDは速さVに比例します。つまり

   V/sinα=V/sinβ になり 屈折率=sinα/sinβ=V/V つまり速さの比になります。

つまり物質中の速さが遅くなればなるほど屈折率は大きいことになります

 

やっと青い光のほうが赤い光より屈折率が大きいのはどうしてでしょう?のわけが

わかりましたね。青い光のほうが赤い光より物質内での速さが遅いので、青い光のほうが赤い光より屈折率は大きいのです。

 

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