物理のトリビア

      

 メロディロードはどのようにして音楽が流れるんでしょう?

 

メロディロードって知ってますか?車で一定の速さで走ると、決まった音楽が聞こえてきます。2004年に「知床旅情」が流れるメロディロードが北海道で作られたのが最初で、今では全国に10箇所もあります。

一定の速さで走らないとうまく聞こえないので交通事故防止というのが当初の目的のようです。

さて、このメロディロードはいったいどうなっているのでしょう?どのようにして音楽が流れるんでしょう?

和歌山県海草郡紀美野町国道370号線に作られたメロディロード全長320mを調べてきました。

流れる音楽は坂本九さんの名曲「見上げてごらん夜の星を」です。

  

場所情報: 海草振興局 地域振興部 産業総務課産業グループメロディロード
      和歌山県紀美野町観光情報 きみの観光HP

ここの道路を使って「メロディロードのしくみ」を説明しましょう。

みなさんもメロディロードをつくるつもりになって考えてみてください。

Q1:メロディロードの長さはどうやって決まる?

A:曲の長さと車のスピードで決まります

 坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」を(知ってる方は)口ずさんでみてください。「見上げてごらん・・・ささやかな幸せを祈ってる」、ここまで歌うとおよそ30秒です。

 つぎに走行する車の時速を決めます。時速40kmとすると秒速約11mです。曲が流れる30秒で車は約330m進みます。つまり時速約40kmでの走行を想定すると全長330mのメロディロードにする必要があります。

Q2:どうして音がでるの?

A:溝を通るときの一瞬の摩擦音が振動数だけ発生するのが原因です

 音は、本来ものがふるえて発生します。その振動数(1秒間の振動の回数)が音の高さを決めます。1秒間に440回振動すればハ長調のラが聞こえます。

でもメロディロードはふるえません。そのかわり車のタイヤが道路に掘られた溝を通るとき、一瞬ですが摩擦で音がでます。

その摩擦音が1秒間に440回出れば、それはラの音として聞こえることになります。

 

 つまりメロディロードにはたくさんの溝が掘られているんです。

 ちなみに溝はだいたい深さ3〜6mm、幅6〜12mmだそうです。

 溝を掘るにはタイヤのスリップ防止のための技術が使われているそうです。

 溝を掘っている様子はこちら

 

 

 

 

Q3:「見上げてごらん」のメロディが流れるために溝はどうなってるの?

A:溝と溝の間隔が音階を、同じ間隔の溝の繰り返しの長さが音符の長さを決めます。

 「見上げてごらん」の出だし「見・・」はハ長調で言うとドの音で振動数ではおよそ260Hzです。つまり1秒間に摩擦音が260回出るように溝を刻めばいいのです。時速40kmの車は1秒間に11m進むので11mの長さのところに260回溝を刻む。つまり・・1100cm÷260= およそ4〜5cm間隔で溝を掘っているのです。

さらに「見上げてごらん・・・ささやかな幸せを祈ってる」までは12小節(4分音符が48個) あります。それが30秒かかるので4分音符1つの長さは30÷48=0.6秒。「見上げてごらん」の「見・・」は4分音符なので、約0.6秒間はじめの音が流れます。その間 に車は11m×0.6秒=6.6m走ります。

 

 つまり660cmの長さをおよそ4cm間隔で溝を刻めばそこを時速40kmで車が走ると

 見上げてごらんの「見・・」が流れるのです!!

 見上げてごらんの「見」の次の「あ」はハ長調ではラで振動数は440Hzですから

 「見」の260Hzより1.7倍多いので溝の間隔は0.6倍狭くなります。

 

 「見」と「あ」の境目の写真です。

 向かって右から車が通ります。

 「見」の幅に比べて「あ」の幅が半分近くに

 なっていることがよく分かります。

 

Q4:スピードをあげて走るとどうなる?

A:メロディは高く、短くなります。

時速60kmで走るとどうなるでしょう。

1)約20秒で終わってしまいます。同じ曲ですから音楽のテンポが1.5倍速くなります。

2)1秒に聞こえる摩擦音が多くなります。260Hzであったものが1.5倍になるので音階は1オクターブの半分程度高くなります。でも相対音階は同じなので同じ「見上げてごらん夜の星を」が高く、短く鳴ります。

実際に走ってみました。聞き比べて見てください。(オーディオ編集で少しノイズ除去しています)

時速40kmで走ったとき聞こえた様子        時速60kmで走ったとき聞こえた様子

メロディ聞き取れましたか?60kmだと高く聞こえましたか?

 

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