オランダにはイエナプランという教育があります。
イエナプラン教育では、「対話-遊び-仕事(=学習)-催し(行事や祝い事)」のサークル(右図)を軸として行われています。
特徴的なのは、異年齢学級であることと、何といってもワールドオリエンテーションの活動です。
右の4つのサークルからも、学校は学習の場としてのみではなく「学習もできる」生活をする場としての印象を強く持たれます。
対人能力や市民性を重視していることから、第一に学力、ではなく、生活するために能力をつけ伸ばしていく、といった姿勢です。
教師の立場としてのクラスリーダーも子どもを枠にはめようとするのではなく、見守るように接しています。
日本の教育にも見習うことができる態度や活動があるのではないかと考え、本研究室では、イエナプラン教育に倣い、子どもの能力をMI(マルチプルインテリジェンス)に注目しながら人間性を伸ばしていく教育を日々考察しています。
私がオランダの教育に注目したきっかけは、毎日新聞の「人」欄に掲載された「オランダの教育-多様性が一人ひとりの子供を育てる」の著者リヒテルズ直子さん(オランダ在住の教育研究者)の紹介記事でした。
その以前から、日本の便利で楽ちんな物があふれた社会を「多様性」がなくなった「単純化・単一化」した社会であると捉えていたので、「多様性」というキーワードに共鳴して2005年夏、リヒテルズさんをたよりにオランダに渡りました。
その後、オランダの魅力にはまってしまい、毎年継続して調査や研究に赴いています(右写真:フェルメールの名画も楽しみの一つ)。
行く度ごとに新しいオランダの姿に気づき、世界のなかからオランダの教育を発見した思いがしています。近年、リヒテルズさんの影響で教育評論家の尾木直樹さんもオランダの教育を日本に紹介され、「日本の三周先を行く教育先進国」(2012.4.13、日本テレビ、アナザースカイ)と評されています。
オランダでは、日本から見ると奇妙な感じしょうが、小学校は子供が200人寄れば新しい学校を作ることができます。校舎も敷地も先生の給料も国が保障してくれます。
なぜなら、オランダでは「教育の自由」(つまり「理念の自由」「設立の自由」「方法の自由」)が
保障されているからです。
ですから面白いことに、様々な教育理念(あるいは宗教)、イエナプラン、モッテソーリー、ダルトン、フレイネなどの学校が、オランダでは花開いています(左写真:私がテーマとしているイエナプラン)。
まさにこの点こそが、教育の「多様性」ということになるでしょう。
司馬遼太郎は「オランダには世界でもっとも成熟した市民社会がある」と言っていますが、このような教育は、まさに成熟した市民社会によってこそ支えることができるものだと実感しています。
オランダと日本の関係は、明治になって疎遠になっていしましたが、あのままオランダとのつきあいが続いていれば、日本はもう少しよくなっていたかも知れません。
私は、あらためてオランダを知り、オランダの教育が日本の教育に何かしら新しいものを示してくれるという手応えがあります。
それは、新しい時代の教育へ向けて、日本の教育の私たちには見えていない「私たちの良さ」を見つけ出す手立てだと思っています。